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らいふのもり

バイオセーフティ|リスク評価

化学物質と生物のリスク」でリスクの話をしましたが、今回は、病原体、遺伝子組替え生物、微生物等のリスク評価の話をします。

これらを取り扱う際は、感染症法、カルタヘナ法等の法令を遵守することに加え、さらに、より安全な取扱い・管理のために、「国立感染症研究所病原体等安全管理規程」※1 やWHOの「バイオセーフティーマニュアル」※2 を参考にすることができます。

国立感染症研究所の管理規程では、病原体等のリスク群分類(表1)を基準として、「取扱う病原体等の病原性(量、取扱い条件も考慮する)」「病原体等の取扱い様式(エアロゾル発生の有無を考慮する)」等の8つの項目※3 をリスク評価し、病原体等のバイオセーフティレベル(BSL)分類を定め、これに対応する実験手技と安全機器及び実験室の設備を適用することで、病原体取扱者等の安全を確保しています。
また、病原体等を用いた動物実験においては、さらに「取扱う病原体の実験動物間での感染・伝播様式」等の4項目※4 を加え、実験動物及びヒトへの感染のリスク評価を行い、動物バイオセーフティレベル(ABSL)分類を決定しています。
病原体等の取扱いBSLは複数の要因を複合的に判断して決定するため、病原体等のリスク群と使用すべき実験室のBSLは、厳密に1対1対応するものではありません※5
その他、詳細は、「国立感染症研究所病原体等安全管理規程」※1 を参照してください。

なお、病原体等の管理においては、バイオセキュリティが重要であり、WHOの「実験室バイオセキュリティガイダンス」※6 を参考にすることができます。

表1.病原体等のリスク群
(「国立感染症研究所病原体等安全管理規程(改訂第三版)」 のp-13(付表1-1病原体等のリスク群による分類)から引用)

リスク群1 「病原体等取扱者」及び「関連者」に対するリスクがないか低リスク
ヒトあるいは動物に疾病を起こす見込みのないもの。
リスク群2 「病原体等取扱者」に対する中等度リスク、「関連者」に対する低リスク
ヒトあるいは動物に感染すると疾病を起こし得るが、病原体等取扱者や関連者に対し、重大な健康被害を起こす見込みのないもの。また、実験室内の曝露が重篤な感染を時に起こすこともあるが、有効な治療法、予防法があり、関連者への伝播のリスクが低いもの。
リスク群3 「病原体等取扱者」に対する高リスク、「関連者」に対する低リスク
ヒトあるいは動物に感染すると重篤な疾病を起こすが、通常、感染者から関連者への伝播の可能性が低いもの。有効な治療法、予防法があるもの。
リスク群4 「病原体等取扱者」及び「関連者」に対する高リスク
ヒトあるいは動物に感染すると重篤な疾病を起こし、感染者から関連者への伝播が直接または間接に起こり得るもの。通常、有効な治療法、予防法がないもの。

※1 国立感染症研究所HP>病原体等安全管理規程(改訂第三版)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-biosafe/8136-biosafe-kanritaikei.html
国立感染症研究所病原体等安全管理規程(改訂第三版)」https://www.niid.go.jp/niid/images/biosafe/kanrikitei3/Kanrikitei3_1006.pdf
※2 WHO Laboratory Biosafety Manual - Third Edition
http://www.who.int/csr/resources/publications/biosafety/WHO_CDS_CSR_LYO_2004_11/en/
※3 参照:「国立感染症研究所病原体等安全管理規程(改訂第三版)」  のp-14(付表1-2 リスク評価項目)
※4 参照:「国立感染症研究所病原体等安全管理規程(改訂第三版)」  のp-15(付表1-3 動物実験におけるリスク評価項目)
※5 参照:「国立感染症研究所病原体等安全管理規程(改訂第三版)」  のp-16(付表2 病原体等のリスク群分類と、 実験室のBSL分類、 実験室使用目的、実験手技及び安全機器との関連性)
※6 WHO Biorisk management: Laboratory biosecurity guidance
http://www.who.int/ihr/biosafety/publications_WHO_CDS_EPR_2006_6/en/

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