ライフサイエンス法令を中心とした情報発信サイト

らいふのもり

がん免疫療法-CAR-T細胞療法

最近、免疫療法の一つとして、ノバルティスファーマが、難治性の白血病等のキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法の製造販売承認(国内初)を取得したというニュースが届きました。※1  今回は、CAR-T細胞療法に関連する話題について紹介します。

※1: NOVARTIS-HP >ノバルティス、国内初となるCAR-T細胞療法「キムリア®」の製造販売承認を取得(2019/3/26) https://www.novartis.co.jp/news/media-releases/prkk20190326

CAR-T細胞療法とは

CAR-T細胞療法は、患者のT細胞を遺伝子導入により改変し、体内に戻すことで、CD19と呼ばれる抗原を細胞表面に発現するB細胞性の腫瘍を認識して攻撃する新しいがん免疫細胞療法です。
CAR-T細胞療法は高度に個別化された治療法であり、患者ごとに、「細胞の採取」「T細胞の改変」「細胞の増殖」「品質検査」「リンパ球除去化学療法」「CAR-T細胞の投与」「がん細胞を攻撃」のプロセスを行うとのことです。(詳細は ※2  参照)

※2: NOVARTIS-HP >CAR-T細胞療法 https://www.novartis.co.jp/innovation/car-t (治療法の技術的内容の紹介ページ)

関連する規制

・CAR-T細胞療法については、日本でも、自治医大とタカラバイオが臨床研究(2015)※3を行っており、規制の観点では、体外(ex vivo)での遺伝子改変は再生医療等の安全性の確保等に関する法律、体内に戻す際(in vivo)は遺伝子治療等臨床研究に関する指針」「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に従っています。なお、カルタヘナ法の観点では、体外での遺伝子改変物は ”第二種使用” となります。また、体内に戻す際に、遺伝子組換えウイルスの存在が否定される場合は、”第一種使用” の承認は不要ですが、否定されない場合は、”第一種使用” の承認が必要となります※4(理由:カルタヘナ法の対象となる生物として、ヒトは除外され、ウイルスは含まれるため)。
・なお、PMDA(医薬品医療機器総合機構)では、2019/4から、遺伝子治療のカルタヘナ法第一種、第二種への対応のため相談窓口が新設※5 されているので、日本で臨床研究・治験を行う場合は、PMDAに相談して進めることになります。

※3: 遺伝子治療・細胞治療等の臨床導入に 関する実施体制上の経験と問題点 http://atdd-frm.umin.jp/slide/23/kume.pdf
※4: ex vivo遺伝子治療用製品の品質管理戦略の留意点 - Pmda  https://www.pmda.go.jp/files/000226417.pdf
※5:・日系バイオテクニュース>PMDA、遺伝子治療のカルタヘナ法第一種、第二種への対応で相談新設へ https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/19/03/07/05351/
・PMDA-HP>PMDA 窓口新設 https://www.pmda.go.jp/review-services/f2f-pre/cartagena/0001.html

薬価

・中央社会保険医療協議会総会(2019/5/15)で薬価収載が了承されましたが、患者1人当たり3349万3407円と高額です。患者一人ひとりに合わせて製造されることから、製造コストが膨らむようです。※6  CAR-T細胞療法に限らず、新しい技術を利用した次世代の医薬品は高額なものも多く、技術革新と医療費についての議論などがなされており難しい問題です。

※6: 薬事日報-HP> 【中医協で了承】「キムリア」薬価は3349万円‐CAR-T療法、保険適用へ (2019/5/17) https://www.yakuji.co.jp/entry71950.html 

おわりに

がん治療に関して、「ノーベル生理学・医学賞を本庶佑特別教授が受賞」で紹介した、免疫力を利用してがんを攻撃する免疫チェックポイント阻害剤のオプジーボ に加え、免疫治療、遺伝子治療、細胞治療、再生医療などの新しい技術を利用した様々なバイオ医薬品等が開発されています。今後のさらなる技術の進歩に期待したいと思います。

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

にほんブログ村

動物・生物ランキング

  • B!