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野生動植物の保護-ワシントン条約

野生動植物の保護に関する「ワシントン条約※1」について取り上げます。
本条約では、締約国会議が2〜3年に1回開催されており、ちょうど、第18回ワシントン条約締約国会議が ジュネーブ(スイス)で開催(2019/8/17-8/28)されたばかりです。当初、象牙やその加工品が大量に流通する日本などを念頭に、全ての国に国内象牙市場の迅速な閉鎖を求める決議案の行方が焦点となっていましたが、各国の象牙市場の一律閉鎖は見送りとなり、市場を維持する日本などに違法取引の防止策の報告を求めることに正式合意しました。また、日本でペット需要が高いコツメカワウソの国際取引の原則禁止や、かまぼこの材料に使われるサメの一種アオザメの規制追加なども決められました※2

※1 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES(サイテス): Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)
※2:外務省ップページ > 外交政策 > ODAと地球規模の課題 > 地球環境 > ワシントン条約 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/wasntn.html
・>ワシントン条約第18回締約国会議  https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ge/page22_003296.html

目的

ワシントン条約の目的は、「野生動植物の国際取引の規制を輸出国と輸入国とが協力して実施することにより,絶滅のおそれのある野生動植物の保護をはかる」ことです。
1972年の国連人間環境会議において「特定の種の野生動植物の輸出、輸入及び輸送に関する条約案を作成し、採択するために、適当な政府又は政府組織の主催による会議を出来るだけ速やかに召集する」ことが勧告され、これを受けて、米国政府及び国際自然保護連合(IUCN)が中心となって野生動植物の国際取引の規制のための条約作成作業を進めた結果、ワシントン条約は1973年3月に採択され,1975年7月に発効しました。※2

概要

ワシントン条約では、絶滅のおそれがあり保護が必要と考えられる野生動植物を附属書Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの3つの分類に区分し、附属書に掲載された種についてそれぞれの必要性に応じて国際取引の規制を行っています。

附属書Ⅰ 附属書Ⅱ 附属書Ⅲ
記載基準 絶滅のおそれのある種で取引による影響を受けている又は受けるおそれのあるもの 現在は必ずしも絶滅のおそれはないが、取引を規制しなければ絶滅のおそれのあるもの 締約国が自国内の保護のため、他の締約国・地域の協力を必要とするもの
規制内容 ・学術研究を目的とした取引は可能
・輸出国・輸入国双方の許可書が必要
・商業目的の取引は可能
・輸出国政府の発行する輸出許可書等が必要
・商業目的の取引は可能
・輸出国政府の発行する輸出許可書又は原産地証明書等が必要
対象種(例) オランウータン、スローロリス、ゴリラ、アジアアロワナ、ジャイアントパンダ、木香、ガビアルモドキ、ウミガメ など クマ、タカ、オウム、ライオン、コツメカワウソ、ピラルク、サンゴ、サボテン、ラン、トウダイグサ など セイウチ(カナダ)、ワニガメ(米国)、タイリクイタチ(インド)、サンゴ(中国) など

なお、規制の対象には、生きている動植物のみならず、はく製等も含まれます。また、その部分やそれらを用いた毛皮のコート、爬虫類の皮革製品及び象牙彫刻品等の加工製品も対象になります(ふん、尿及び嘔吐物(自然に排出されたもの)並びにその加工品は本条約の規制の対象外です)※3

※3:経済産業省ホーム >政策について>・・> ワシントン条約(CITES)https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/
・>ワシントン条約に関する最新情報・取り組み・お知らせ>ワシントン条約について(条約全文、付属書、締約国など)https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/cites_about.html

ワシントン条約関連国内法

ワシントン条約を含め、関連する主な国内法令の目的、規制の内容を以下にまとめました。「種の保存法」「植物防疫法」「外来生物法」「家畜伝染病予防法」等が関連します。なお、外国産の希少野生生物については、「二国間渡り鳥等保護条約・協定」でも保護されています。

法令 主な目的 主な規制の内容
ワシントン条約 ※3 絶滅のおそれのある野生動植物の保護 特定の野性動植物の輸出入の規制
種の保存法※4 絶滅のおそれのある野生生物の種の保存 希少野生動物種の輸出入の規制
植物防疫法※5 農作物の保護 検疫有害動植物の輸入の規制
外来生物法※6 生態系や人への被害の防止 検疫有害動植物の輸入の規制
家畜伝染病予防法※7 家畜の伝染性疾病の予防・まん延の防止 特定の病原体の規制

上記のなかで、特に「種の保存法」は、ワシントン条約との関連が深いため、概要を簡単に紹介します。

【種の保存法の概要】
国内外の絶滅のおそれのある野生生物の種を保存するため、国内に生息・生育する希少な野生生物を保全するために必要な措置(個体の取り扱い規制、生息地の保護、保護増殖事業の実施など)、又は、外国産の希少な野生生物を保全するために必要な措置を定めています。
個体の取扱い規制としては、国内希少野生動植物種に指定されている種(約300種)は、販売・頒布目的の陳列・広告、譲渡し、捕獲・採取、殺傷・損傷、輸出入等が原則として禁止、国際希少野生動植物種に指定されている種(約800種)は、販売・頒布目的の陳列・広告と、譲渡し等は原則として禁止されています。

※4 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法):環境省HP「種の保存法の概要」http://www.env.go.jp/nature/kisho/hozen/hozonho.html
※5:農林水産省HP「植物検疫に関する情報」http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/keneki/
※6:環境省HP「外来生物法」http://www.env.go.jp/nature/intro/1law/index.html
※7:動物検疫所HP「家畜伝染病予防法の解説」http://www.maff.go.jp/aqs/hou/36.html
農林水産省HP「家畜伝染病予防法の改正について」http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/eisei/e_koutei/kaisei_kadenhou/

まとめ

野生生物の密漁などはなくなっておらず、また、環境破壊などにより世界的規模で生物多様性が失われ続けており、「ワシントン条約」締約国会議などの国際的な場での協議や協調がますます重要になっています。

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