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らいふのもり

早ければ今夏にもゲノム編集食品が流通か?

テレビや新聞で盛んに報じられていますが、今週、厚生労働省が、ゲノム編集で開発された食品の一部(外部遺伝子が入らない場合)について、届け出だけで流通を認める方針が固まり、早ければ今夏にも販売が可能になりそうです

【ゲノム編集とは】
「ゲノム編集」とは、CRISPR-Cas9などを使ってゲノムDNAを編集して遺伝子を改変する技術であり、従来から知られている「遺伝子組換え」に比べて、多様な遺伝子を高い効率で改変できる画期的な技術です。
大きくは、狙った場所でDNAを切断し、①改変したい遺伝子を壊して機能を失わせる(外部遺伝子は入らない) ②改変したい遺伝子に別のDNA配列を挿入する という方法があります。

【現時点の状況】
厚生労働省は、今週3/18に、ゲノム編集で開発した一部の食品(外部遺伝子が入らない場合)は従来の品種改良と同じであるとして、同省の安全審査を受けなくても届け出だけすれば流通を認める方針を固めました※1。但し、外部遺伝子が入らない場合でも、安全性を疑問視する声も大きいので、今後、正しい情報を伝える食品表示のあり方などが課題になると思われます。
なお、環境省も、現時点で、同様に、外部遺伝子が入らない場合は、自然界の突然変異のように、既存遺伝子の機能を一部失わせただけなので規制しない方針です。

※1 厚生労働省HP「薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会 新開発食品調査部会 資料」<平成31年3月18日開催>
 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000203059_00011.html

【ポイント】
現在、消費者団体などから、届け出制で安全性を担保できるのかという疑問が出されており、今後の議論の中心となりそうです。技術的には、編集技術の精度が高まったとはいえ、意図しない部分で遺伝子を切断し、予想外の形質を与えてしまう恐れが残るということです。
ゲノム編集については、今まで、何回も取り上げています※2が、今回のような新しい技術に対しては、環境(今回は健康も)に深刻なあるいは不可逆的な被害の恐れがある場合、科学的確実性が欠如している状況でも、規制措置を可能にする考え方である「予防原則/予防的取組」がポイントとなります。
同様な話は、過去にも、化学物質などで議論されてきました。今回は、食品に関することなので、全ての人が関係者となります。拙速ではなく、真摯な議論が必要だと思っています。

※2「遺伝子に関連する規制」「予防原則/予防的取組」「ゲノム編集の倫理的課題」「賀建奎准教授がゲノム編集を行い双子を誕生させたと主張」「カルタヘナ法」「生命系倫理指針の改正・制定

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