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法令

ゲノム編集の倫理的課題

ライフサイエンス分野の新しい技術の一例として、「ゲノム編集」※1が知られています。
「ゲノム編集」とは、CRISPR-Cas9などを使って、ゲノムDNAを編集して遺伝子を改変する技術であり、従来から知られている「遺伝子組換え」に比べて、多様な遺伝子を高い効率で改変できる画期的な技術です。

「ゲノム編集」には、いくつかの編集方法があり、方法によって、外来遺伝子の導入がある場合 や、その他、導入がない場合 等に分かれます。遺伝子組換え生物等に該当する場合は「カルタヘナ法」※2を遵守する必要がありますが、その他の場合については議論のあるところであり、見解は定まっていません。

日本では、「全国大学等遺伝子研究支援施設連絡協議会」から声明等※3が出されています。実際の対応は研究機関の判断によるが、「予防的取組」として拡散防止措置等の管理がなされているところがほとんどと思われます。
また、平成29年9月27日に、日本学術会議から「我が国の医学・医療領域におけるゲノム編集技術のあり方」について提言※4がだされました。提言は、以下の4つであり、特に生殖医療への応用に関しては、国の指針により当面は禁止するべきであり、法規制の必要性についても検討するべきであるとしています。

【提言1】 体細胞ゲノム編集治療と被験者の権利保護及び臨床研究の規制整備
【提言2】 体細胞ゲノム編集治療製品開発の支援体制構築
【提言3】 ゲノム編集を伴う生殖医療の臨床応用に関する暫定的禁止を含む厳格な規制
【提言4】 社会的理解と透明性を踏まえた、ヒト生殖細胞・受精胚ゲノム編集を伴う基礎研究の規制

また、ゲノム編集を用いる技術として、「ジーンドライブ(Gene Drive)」が知られています。
Gene Drive を利用した生物(Gene Drive 生物)は、その特性からメンデルの遺伝の法則を凌駕して、その遺伝的性質を対象となる生物種集団に急速に拡散させる潜在的能力があり、全国大学等遺伝子研究支援施設連絡協議会から、その利用に関して注意を払うよう声明がだされています。※5 また、生物多様性条約締約国会議(第13回)の委員会でも議論されており、今後の国内外の動向に注意する必要があります。

ゲノム編集に関しては、今後も倫理面や規制の動向を注視する必要があります。

※1 :医学・医療領域におけるゲノム編集技術のあり方検討委員会|日本学術会議
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/genome/genome.html
ゲノム編集技術 - 科学技術振興機構
https://www.jst.go.jp/crds/pdf/2014/RR/CRDS-FY2014-RR-06.pdf
※2 カルタヘナ法: 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律
(参照) 文部科学省「ライフサイエンスの広場」 > 安全に関する取組 > 遺伝子組換え実験
http://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/anzen.html
※3:全国大学等遺伝子研究支援施設連絡協議会HP > ゲノム編集技術を用いて作成した生物の取り扱いに関する声明・見解・方針  http://www1a.biglobe.ne.jp/iden-kyo/genome-editing1.html
※4:http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-t251-1.pdf
※5: 全国大学等遺伝子研究支援施設連絡協議会 「Gene Driveの取扱いに関する声明」
http://www.idenshikyo.jp/genome-editing/genome-editing_2.html

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