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法律の解釈で迷ったときの対応方法

今まで、様々な法令について取り上げてきましたが、サイエンス系の法令は、法律の知識に加えサイエンスの知識も必要なので、その解釈は簡単ではありません。
特に、ライフサイエンス分野は「ライフサイエンス法令の対象物の大きさの比較」などで話をしたように、その対象がDNA、動物、ヒト等と多様であり、法目的も安全に加え、倫理にかかわるものが多いため、難解だと言えます。
今回は、法律の解釈に迷った際の対応方法について話をしたいと思います。

研究

研究を進める上で、法律への該当の有無等で迷うことがよくあります。研究規制は文部科学省所管のものが多いですが、基本的には、法律を所管する行政機関の担当部署に問い合わせをすればよいと思います。
例えばですが、遺伝子組換えに関する「カルタヘナ法」※1 関連の研究に係わることであれば、”文部科学省研究振興局ライフサイエンス課 生命倫理・安全対策室「遺伝子組換え実験担当」" が問い合わせ先になっています※2。カルタヘナ法は経済産業省、文部科学省等の多くの行政機関が所管する法律なので、内容によっては、他の行政機関の窓口を紹介されることがあると思いますが、ほとんどの場合、これで疑問は解消すると思います。

※1:: 「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」    http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=415AC0000000097
※2:文部科学省 ライフサイエンスの広場ホーム>安全に関する取組「遺伝子組換え実験」http://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/anzen.html

ビジネス

企業が、ビジネスを進めていて、法律の解釈に迷うことは多々ありますが、その場合は、法律の所管行政機関に問い合わせをすれば、ほとんどの場合は解決すると思います。
例えば、化学物質規制の一つである、化審法※3 は、新規化学物質を事業化する際に対応が必須の環境汚染の防止を目的とした法律ですが、解釈に迷う場合は、「経済産業省 製造産業局 化学物質管理課 化学物質安全室※4 」が窓口になっています。問い合わせは、電話や「お問合せメールフォーム」からweb上で行うこともできます。

これで、対応できない場合には、以下の制度を利用することが可能です。

※3:化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律 http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=348AC0000000117
※4: 経済産業省ホーム >・・>化学物質管理 >お問合せ  https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/contact.html

法令適用事前確認手続

「法令適用事前確認手続※5」(いわゆる日本版ノーアクションレター制度)は、行政庁に正式なヒアリング(質問・照会)をする手続であり、手続きの概要※6 は以下の通りです。
公表に関しては、例えば、厚生労働省所管の法律に関してホームページで公開※7 されていますが、件数はあまり多くありません。

【法令適用事前確認手続の概要】

・民間企業等が、その事業活動に係る具体的行為が特定の法令の規定の適用対象となるかどうかについて、あらかじめその規定を所管する国の行政機関に確認し、その行政機関が回答し、その内容を公表する制度。
・同手続の対象となる具体的な法令の範囲、照会を受け付けてから回答し、公表するまでの期間については、各府省が細則で確定する。

※5:電子政府の総合窓口ホーム>申請・届出>法令適用事前確認手続  https://www.e-gov.go.jp/application/no_action_letter.html
※6:総務省トップ >・・> 法令適用事前確認手続(いわゆる日本版ノーアクションレター制度)http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/kakunin/index.html

※7:厚生労働省ホーム >> 法令適用事前確認手続 > 照会に対する回答一覧 https://www.mhlw.go.jp/wp/no-action/kaitou.html

プロジェクト型「規制のサンドボックス」・グレーゾーン解消制度・新事業特例制度

企業が、新しいビジネスモデルを考え、事業化しようとした場合、法律上の問題がないか判断に迷うことがあります。この場合は、プロジェクト型「規制のサンドボックス」・グレーゾーン解消制度・新事業特例制度(表を参照)※8の利用が有効です。
例えば、「グレーゾーン解消制度」の活用事例として、「利用者の自己採血や事業者による検査結果の通知、より詳しい検査の勧めは規制の対象とならないことが確認された」ことが紹介されています。
活用実績については、行政機関のホームページ※9 で公開されているので、関連する分野について見てみると参考になると思います。
また、類型化・抽象化が可能なものについて、ガイドライン等の形で、関連法令の解釈が公表されています。例えば、医療・介護分野と関係の深い「健康寿命延伸産業」について、厚生労働省と経済産業省でまとめられています※10

制度 目的別の制度利用 制度の概要 特長
プロジェクト型「規制のサンドボックス」 まず事業の「実証」を行い、規制改革・事業化に繋げたい AI,、IoT、ブロックチェーン等の革新的な技術やビジネスモデルの実用化の可能性を検証し、実証により得られたデータを用いて規制の見直しに繋げる制度 ・法改正を前提とせず、企業ごとの申請が可能
・事業所管大臣、規制所管大臣の認定の下、参加者を限定した上で、実証を行うことができる
グレーゾーン解消制度 新しく開始する事業における規制の解釈・適用の有無を確認したい
ex.1:新規事業を計画中だが、○△法の規制に抵触するだろうか
ex.2:規制の運用基準が不明確で理解し難い
事業者が、現行の規制の適用範囲が不明確な場合においても、安心して新事業活動を行い得るよう、具体的な事業計画に即して、あらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度 ・企業ごとに照会・申請が可能
・正式申請後、原則1か月以内に回答が得られる
・事業所管省庁がしっかりサポート
新事業特例制度 規制の特例措置を設けて事業化したい
ex.1:技術力で安全性を向上させているが、規制がネックで新事業を開始することができない
ex.2:規制の見直しを要望したいが、手続きが煩雑で時間もかかりそうだ
新事業活動を行おうとする事業者による規制の特例措置の提案を受けて、安全性等の確保を条件として、「企業単位」で、規制の特例措置の適用を認める制度 ・企業ごとに照会・申請が可能
・正式申請後、原則1か月以内に回答が得られる
・事業所管省庁がしっかりサポート

※8:経済産業省ホーム>・・>「産業競争力強化法」に係る支援措置>プロジェクト型「規制のサンドボックス」・新事業特例制度・グレーゾーン解消制度 https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/
※9:・経済産業省ホーム>・・> グレーゾーン解消制度の活用実績  https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/result/gray_zone.html

・厚生労働省ホーム > 申請・募集・情報公開 > グレーゾーン解消制度・新事業特例制度https://www.mhlw.go.jp/shinsei_boshu/gray_zone/gray_zone.html
※10:経済産業省ホーム>・・>健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドラインについて  https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/guideline.html

おわりに

研究やビジネスを進めていると、法律の解釈で判断に迷う場面は必ずあると思います。行政機関への相談内容によって、どの制度を利用するかは変わってきますが、積極的に利用して、研究やビジネスを円滑に進めたいものです。

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