ライフサイエンス分野の法令の理解と解釈には、科学と法律の両方の知識が必要です。科学の専門家でも、法律の知識がなければ法律の解釈は難しいといえます。今回は、法律の基礎や見方について説明します。
法の種類
法の種類を階層構造で示しました。上位法に反する下位法は効力を有しません。また、命令の中では、政令が省令の上位法となり、告示、通達等では、法令を運用する上での注意点等が述べられています。
憲 法
↓
条 約
↓
法 律
↓
命令(政令、省令)
告示、通達、通知
↓
条 例
法の解釈
法の解釈には、
◇「文理解釈」: 文字や字句に従って解釈
◇「論理解釈」: 立法の目的、他法令との関係、法制定の経緯等、さまざまな論理を用いて解釈
があり、
解釈の際には、
◇「法的安定性」: 法の解釈を一定にする要請
◇「具体的妥当性」: 具体的な事件が適切に解決されること
が考慮されます。
「及び」、「又は」の使い方
法律をきちんと理解のためには、以下のような基本的なことは知っておく必要があります。
【同じ種類の語を2以上並べるとき: AND 】 「、」 で結合して最後に 「及び」
【結合される語の種類やレベルが異なるとき】 大きな選択的接続に、「並びに」 を使う
例えば、 (A、B及びC)並びに(D及びE)
【同じ種類の語を2以上並べるとき: OR 】 「、」 で結合して最後に 「又は」
【結合される語の種類やレベルが異なるとき】 小さな選択的接続に、 「若しくは」 を使う
例えば、 (A、B若しくはC)又は(D若しくはE)
以上のルールを頭にいれて、畜伝染病予防法第五十一条第一項 を読んでみます。
第五十一条 家畜防疫官又は家畜防疫員は、家畜の伝染性疾病を予防するため必要があるときは、競馬場、家畜市場、家畜共進会場等家畜の集合する場所、畜舎、化製場若しくは死亡獣畜取扱場、と畜場、倉庫、船舶、車両、航空機又は家畜の伝染性疾病の病原体により汚染し、若しくは汚染したおそれがあるその他の場所に立ち入つて動物その他の物を検査し、関係者に質問し、又は検査のため必要な限度において、動物の血液、乳汁等を採取し、若しくは動物の死体その他の物を集取することができる。
「又は」、「若しくは」が多く、なかなか理解が難しいですね。
そこで、小かっこ( ) 中かっこ{ } 大かっこ〔 〕 を用いて整理してみました。
少しは分かりやすくなったと思いますが、これでも難しいと思います。
第五十一条 { (家畜防疫官)又は(家畜防疫員) } は、家畜の伝染性疾病を予防するため必要があるときは、【 (競馬場)、(家畜市場)、(家畜共進会場等家畜の集合する場所)、(畜舎)、{ (化製場)若しくは(死亡獣畜取扱場) } 、(と畜場)、(倉庫)、(船舶)、(車両)、(航空機)又は { (家畜の伝染性疾病の病原体により汚染し)、若しくは(汚染したおそれがある)その他の場所} 】に立ち入つて 【 (動物その他の物を検査し)、(関係者に質問し)、又は { 検査のため必要な限度において、(動物の血液、乳汁等を採取し)、若しくは(動物の死体その他の物を集取する) } 】ことができる。
法律の見方
法律は漫然とみていると頭に残りにくいものですが、法律の「対象物はなにか?」「対象となる行為はなにか?」「適用除外」に留意してみると記憶に残りやすく、さらにこれらと法目的との関連を考えると理解が深まります。
また、法令には、①〜③のような見方があると思います。②では特定の動物、③では動植物の輸出入のように複数の法令を一緒にみていくと、実際の事例でどう対応するかがわかってくると思います。
①個別の法令
ex. 感染症法
②特定の対象物に関する複数の法令
【動物】 ex. 動物愛護管理法、家畜伝染病予防法、外来生物法、種の保存法
【微生物】 ex. カルタヘナ法、植物防疫法、感染症法、家畜伝染病予防法
③特定の行為に関する複数の法令
【動物の輸出入】 ex. 家畜伝染病予防法、感染症法、種の保存法、外来生物法
【検疫】 ex. 家畜伝染病予防法、感染症法、水産資源保護法、植物防疫法
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