「予防原則/予防的取組」で、新しい技術の一例として、ナノマテリアル※1の予防的取組について取り上げました。
多くのナノマテリアルが知られていますが、サッカーボールのような形状の炭素数60からなる 「フラーレン」は、その発見により1996年にノーベル化学賞が授与※2 されたので、ご存知の方も多いと思います。
「フラーレン」は、商業的に製造されており、化粧品、電子材料、医療材料などとして応用されています。
身近なところでは、「フラーレン」が配合されたボーリングの球もあります。「フラーレン」には多くの特徴がありますが、そのうち電子の授受のしやすさについて説明します。尚、分かりやすさを重視したため、正確な説明ではないことを、予めご了承ください。
「フラーレン」は60個の炭素原子全体に電子の雲が広がっているため、他の物資から電子を受け取ったり、電子を与えたりしやすい性質をもちます。光を照射すると、電子が揺さぶられるため動きやすくなり、より電子の授受をしやすくなります。この特徴を利用して有機太陽電池のN型半導体材料としての利用等が行なわれています。「フラーレン」は、6個の炭素原子を持つベンゼンよりも電子の雲の広がりがより大きいため、電子が授受されやすいとイメージすれば分かりやすいのではないでしょうか。
少し脱線しますが、化学の専門家は、化学構造を電子の雲で考えるため、その化学物質が、電子を授受しやすいか、どの部分がどういう反応をするか、どんな色を持つかなど、化学構造を見るだけで分かるものです。これは、医薬品のデザイン(分子設計)をしている専門家も同様です。
さて、医療材料等のライフサイエンス分野への「フラーレン」の応用ですが、「フラーレン」のもう一つの特徴である、「フラーレン」の内部に金属を内包できることを利用した造影剤としての応用が盛んです。これに比べ、「フラーレン」の電子の授受のし易さを利用した例は少ないのですが、今後の研究の進展を期待しています。
※1 :・ナノマテリアル(少なくとも一次元が100nmより小さい)
・ナノマテリアルについて-厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/03/s0303-6c.html
※2 :Chem-Station HP > 世界の化学者データベース, 賞受賞者 > ノーベル化学賞・受賞者一覧
http://www.chem-station.com/chemist-db/archives/2009/02/post-5.php
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