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倫理

AIと倫理

AIと医療」で、AI※1を活用した医療診断/画像診断について取り上げました。
AIに関しては、様々な分野で利用が進んでおり、例えば、将棋の世界では、少し前まではプロ棋士とコンピュータソフトの対戦が話題になっていました。しかし、最近では、ソフトが優位になり、対戦よりも、いかにソフトを利用して人間が強くなるかというような活用に関心が移っていると思われます。

※1:AI(artificial intelligence:人工知能)とは人間の知的能力をコンピュータ上で実現するシステムのこと。なお、AI>機械学習(コンピュータが学習する手法。(人が特徴を定義))>ディープラーニング(コンピュータが特徴を自動定義)の関係にある。

AIの進歩により、ライフサイエンスや医療分野でも、創薬、画像診断、医療診断などで、AIの活用が進んできています。AIを医療分野に導入する際には、「医薬品医療機器等法(薬機法)」「医師法」「個人情報保護法」等の規制とともに、倫理にも注意する必要があります。AIの活用を推進するためには、AIの倫理的な側面について整備することが求められており、現在、国内外の様々な政府機関や団体等において、AIの研究開発や利活用に関する規程や指針等の策定が進んでいます※2 。

※2:AI 倫理に関する現状 https://www.unisys.co.jp/tec_info/ik15po00003vykiq-att/13907.pdf  (表1参照)

人工知能学会 倫理指針

・日本では、人工知能学会に倫理委員会があり※3「人工知能学会 倫理指針」が定められています。
・指針の序文では、「人工知能学会は、自らの社会における責任を自覚し、社会と対話するために、人工知能学会会員の倫理的な価値判断の基礎となる倫理指針をここに定める。学会員はこれを指針として行動するよう心がける。」と、その目的が記載されています。
・本文では、(人類への貢献) (法規制の遵守) (他者のプライバシーの尊重) (公正性) (安全性)(誠実な振る舞い)(社会に対する責任) (社会との対話と自己研鑽) (人工知能への倫理遵守の要請)の9つの項目について定められています。

※3:人工知能学会 倫理委員会 http://ai-elsi.org/ (人工知能学会 倫理指針 )http://ai-elsi.org/wp-content/uploads/2017/02/%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E7%9F%A5%E8%83%BD%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E5%80%AB%E7%90%86%E6%8C%87%E9%87%9D.pdf

AI倫理ガイドライン(欧州委員会)

・このような背景のもと、欧州委員会は、2019/4/8にAIに関する倫理ガイドラインを発表※4しました。EUによるAI倫理へのアプローチを世界的に普及させたい意向であり、このあたりは、他の規制(例えば、欧州化学物質管理規制(REACH))と同様、規制で主導権をとり、産業上の優位性に結び付けようという戦略を感じます。
・以下に、欧州委員会の倫理ガイドラインを記載しました。(1)は、少し古いですがSF作家のアイザック・アシモフのロボット工学3原則の第一条「ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。」と似ています。また、(2)〜(7)は生命系倫理指針(「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」など、ヘルシンキ宣言の考えをもとに作成されている)と共通点が多いと思われます。

■欧州委員会のAIに関する「倫理ガイドライン」(信頼できるAIは合法的で倫理的、堅固であるべきとし、その条件として、次の7要件を挙げた):
(1)人間の活動(human agency)と監視:AIは、人間の活動と基本的人権を支援することで公平な社会を可能とすべきで、人間の主体性を低下させたり、限定・誤導したりすべきではない
(2)堅固性と安全性:信頼できるAIには、全ライフサイクルを通じて、エラーや矛盾に対処し得る安全かつ確実、堅固なアルゴリズムが必要
(3)プライバシーとデータのガバナンス:市民が自身に関するデータを完全に管理し、これらのデータが市民を害し、差別するために用いられることがないようにすべき
(4)透明性:AIシステムのデータの処理のされ方などの追跡可能性の実現
(5)多様性・非差別・公平性:AIは、人間の能力・技能・要求の全分野を考慮し、アクセスしやすいものとすべき
(6)社会・環境福祉:AIは、社会をより良くし、持続可能性と環境に対する責任を向上するために利用すべき
(7)説明責任:AIとAIにより得られる結果について、責任と説明責任を果たすための仕組みを導入すべき

※4: 日本貿易振興機構(JETRO )HP「欧州委、AI倫理ガイドラインを発表 | ビジネス短信 - ジェトロ」https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/04/17aa7120c9481135.html 

今後

・国連教育科学文化機関(ユネスコ)が、2019/4/17にAIの倫理に関して国際的な規範の策定に取り組むことを決め、一定の規範力のある(法的拘束力はなし)勧告を、2021年のユネスコ総会で採択することを目指しています※5
・AIに関しては、「機械にどこまで決定させるか」などの議論があり、ライフサイエンスや医療分野への影響が大きいため、その動向が注目されます。

※5: 上毛新聞HP「AI倫理の国際規範策定へ ユネスコ、21年目標」https://www.jomo-news.co.jp/news/domestic/science/125823

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