すぐれた特性や機能をもつ有機化学物質/材料は、機能性化学品(又はファインケミカル)と呼ばれることがあります。具体的には、半導体材料、高性能エンプラ、有機EL材料、印刷材料、環境材料(生分解性)などが挙げられます。
化学物質の機能と重量当たりの価格の関係
汎用の化学品と機能性化学品は明確に区別できるものではありませんが、下図のように、重量(kg)当たりの価格が高いものが機能性化学品に分類されます。
汎用化学品のメタノールやポリエチレンなどのポリマーは数百円〜数千円/kg程度ですが、半導体材料や機能性色素などは数万円〜数百万円/kgの価格となります。このように、機能性化学品は、その機能による付加価値のため重量当たりの価格が高く、化学産業にとって魅力的な事業領域となっています。なお、医薬品は薬価から計算すると1億円/kgを超えるものもたくさんあり、医薬品産業はより高付加価値の産業といえます。
新規化学物質の届出件数
2017年度の日本の化学工業の出荷額は、定義にもよるので幅がありますが、約20〜40兆円超の規模であり、世界では、中国、アメリカに次いで第3位です。
機能性化学品の開発と連動していると考えられる新規化学物質の開発件数を、化審法の届出件数から推定すると、製造・輸入量が1トン超/年の化学物質は毎年500〜700件程度、1トン以下/年の化学物質は累計で3万5千件程度あり※、電気・電子材料、塗料、インキ、レジスト材料などが活発に研究開発されていると考えられます。
※ 化審法の施行状況(平成30年度)令和2年1月 20日経済産業省製造産業局化学物質管理課化学物質安全室
https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/files/information/sekou/sekou_h30.pdf
おわりに
付加価値の高い機能性化学品は、開発分野と目標の設定、分子設計、探索合成と性能評価、スケールアップ製造、上市のプロセスを経て、世の中に出ます。機能性化学品の開発者には、研究開発や事業化に必要な、化学品の機能、知的財産権、契約、法規制などの幅広い知識が求められます。今後、これらについても取り上げていきます。