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化学

実験室で使われる化学物質

ホルマリンの誤投与」で、ホルマリン(ホルムアルデヒド)を取り上げ、その毒性などについて話をしました。

生物や化学の実験室では、様々な化学物質が使われていますが、今回、いくつかの物質について取り上げます。いずれも、有害性や関連法令については、CAS番号から簡単に調査することができるので、興味のある方は是非調査してみてください。

エタノール
ホルマリンと同様に単純な化学構造をもちます。「エタノール」水溶液は、お酒なので「ホルマリン」以上になじみ深いものです。リラックスの効用に加え、ライフサイエンス研究者は消毒用途として日常使用しています。
このように身近な「エタノール」ですが、有害な影響もあるので、飲みすぎや作業中の曝露はできるだけ避けたほうがいいです。また、60%以上(重量)の「エタノール」水溶液は消防法上の危険物第4類のアルコール類に該当するので、取扱いに注意が必要です。

クロロホルム
化学系だと、有機合成における反応溶媒などに使われます。ライフサイエンス系では古くは吸入麻酔薬として使われていましたが、有害性が高いため、現在では化学系、ライフサイエンス系ともあまり使われていません。
さて、「クロロホルム」と同じ系統の種々のハロゲン化アルキル系溶剤 「ジクロロメタン(塩化メチレン)」(CAS番号:75-09-2)、「テトラクロロメタン(四塩化炭素)」(CAS番号:56-23-5)などが知られています。これらも有害性が高いので取り扱いには注意が必要です。
数十年前の化学系の実験室では、有機合成における反応溶媒、抽出操作における抽出溶媒として、「クロロホルム」等をよく使っていたものです。しかし、今では、より有害性が低い「酢酸エチル」(CAS番号:141-78-6)がかわりに使われることが多いです。
抽出操作をしたことがある人は分かると思いますが、「酢酸エチル」は水よりも比重が小さいので上層に分離する点が、下層に分離する「クロロホルム」とは異なります。それだけならよいのですが、「酢酸エチル」は水層と2層にきれいに分離せず、界面がもやもやすることが多いので、使いにくいと思われた方が多いのではないでしょうか。しかし、やはり多少の使いにくさは我慢して、有害性の低い「酢酸エチル」を使うことをお勧めします。

ベンゼン
化学系だと、有機合成における原料などに使われます。以前は有機溶剤として使われていましたが、有害性が高いため現在は使われていません。
さて、「ベンゼン」と同じ系統の種々の芳香族炭化水素系溶剤 「トルエン」(CAS番号:108-88-3)、「キシレン」(3種類の異性体あり)(CAS番号:95-47-6、108-38-3、106-42-3)などが知られています。
「トルエン」は麻酔作用があり、「キシレン」は、組織切片標本の作製の際の溶媒として用いられているので、ライフサイエンス系でもなじみが深いのではないでしょうか。これらも有害性が高いので取り扱いには注意が必要です。

最後に、「健康食品と健康」「大相撲と塩」でも紹介しましたが、16世紀のスイスの医師、錬金術師等であり、毒性学の父と呼ばれる 「パラケルスス」(Paracelsus)の言葉
「すべての物質は毒である。毒でないものなど存在しない。摂取量によって毒であるか、そうでないかが決まる」
を紹介します。

個々の化学物質は有害性の高いものから低いものまでありますが、有害性の高いものでも曝露を防止してリスクを低減することは可能であり、逆に有害性の低いものでも、多量に曝露することはリスクを高めます。つまり、個々の物質の有害性を知った上で、適切に曝露を防止することで、リスクをコントロールすることができます。

以上のことを踏まえて、研究における試薬等を適切に取扱って欲しいと考えています。

※ : NITE(製品評価技術基盤機構) 化学物質総合情報提供システム(CHRIP)総合検索画面
http://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/srhInput

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