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倫理

さまざまな研究倫理教育の紹介

研究倫理の全体像を以下の図にまとめました。研究倫理は広い概念であり、研究公正や法令・指針の遵守なども含まれます
これらの倫理に関する教育には、その内容や実施形式などさまざまなものがあり、最近は便利な e-learning が増えてきています。今回は、倫理教育について取り上げます。

 

教育の種類

義務/努力義務

教育には、法令・指針により実施が義務のもの、義務ではないが実施することが好ましい努力義務があるものなどがあります。
義務的教育としては、例えば、医学系研究の開始前に「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(医学系指針)」に従って研究者は教育研修を受け、また、研究を実施中は適宜継続して(1回/年程度) 教育研修を受講する必要があります。
努力義務の教育としては、例えば、医療系関係者は、ヘルシンキ宣言(世界医師会)や自律の尊重、無危害、善行、正義等の医療倫理の教育研修を受けることが望まれます。

研究公正/医療・生命倫理

研究倫理は広い概念であり、教育も、研究不正防止(研究公正)のための教育や医療・生命倫理系の教育などがあります。
これらのうち、冒頭の図で示した、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(医学系指針)」、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究等に関する倫理指針(ヒトゲノム指針)」、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療法)」、「臨床研究法」に加え、「ヒトES細胞関連の指針」などで求められる教育は、実施が義務となっています。

倫理教育の事例

上記の ”教育の種類” で述べたように、さまざまな教育が行われていますが、ここでは、代表的なものを紹介します。

研究公正 -日本学術振興会 -

日本学術振興会は、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日 文部科学大臣決定)に基づき、配分機関として研究機関における研究倫理教育の普及・定着や高度化の支援などを行っており、研究公正に関する教育教材を提供※1 しています。「科学の健全な発展のために-誠実な科学者の心得-」のテキストや eラーニング [eL CoRE] ※2 があり、主に、大学や公的研究機関が使用しています。なお、受講にあたって年齢・学歴・職業・資格等の条件はなく、無料で受講することができます。
※1:日本学術振興会TOP>事業のご案内>研究公正>研究倫理教育教材 https://www.jsps.go.jp/j-kousei/rinri.html
※2:研究倫理eラーニングー「科学の健全な発展のために-誠実な科学者の心得-」をもとに作成。人文学・社会科学から自然科学までのすべての分野の研究に関わる者が、どのようにして科学研究を進め、科学者コミュニティや社会に対して成果を発信していくのかといったことについて、エッセンスになると思われる事柄を整理しまとめたもの。研究を進めるにあたって知っておかなければならないことや、倫理綱領や行動規範、成果の発表方法、研究費の適切な使用など、科学者としての心得が示されている。

eAPRIN -公正研究推進協会 -

公正研究推進協会(APRIN)は、わが国の研究者等の関係者への研究倫理関連教材や勉強会の提供などを行っており、「APRIN eラーニングプログラム(eAPRIN)」※3 (旧CITI  Japan)でさまざまな教材※4 を提供しています。生命医科学系、理工系、人文系向けに、責任ある研究行為、人を対象とした研究、研究の安全性、実験動物の取り扱い、治験などの幅広い範囲の内容をカバーしています。
大学では、例えば科研費などにより行われる研究活動に参画する研究代表者や研究分担者は交付申請前までに受講が必要とされているところが多く、大学が契約していれば所属する研究者や学生は無料で利用することができます。しかし、個人での利用は有料となります。
※3:一般財団法人公正研究推進協会Home > 教材利用 https://www.aprin.or.jp/e-learning
※4:「GCP/治験」「AMED支援「国際誌プロジェクト」提供教材」「技術者向けの倫理」「中等教育向け教材」「安全保障貿易管理(輸出管理)教材」など

ICR臨床研究入門(略称:ICRweb) -国立がん研究センター -

ICRweb」は、臨床研究を実施する医学研究者や倫理審査委員会の委員などの関係者を対象に、臨床研究に必要な知識を提供するe-learningサイト※5 です。臨床研究に係わる幅広い内容※6 を学ぶことができます。講義受講は無料ですが、修了証発行は有料となります。

※5:臨床研究に携わる人のeラーニングサイト ICR臨床研究入門  https://www.icrweb.jp/
※6:「臨床研究の基礎知識講座」「臨床試験入門講座(JCOG臨床試験セミナー)」「生物統計基礎セミナー」「生物統計学・疫学研究方法論」「プロトコール、論文」「臨床研究の方法論的トピック」「疫学における介入試験講座」「個別化治療開発のための研究デザイン講座」「研究倫理指針の解説」「被験者保護と研究倫理講座」「治療開発」「GCPトレーニング」「臨床研究コーディネーター講座 -導入研修、Advance研修-」「臨床研究機関の体制整備講座」「臨床研究倫理国際シンポジウム」など

REC EDUCATION  -東京大学医科学研究所-

「REC EDUCATION」は、倫理審査の水準の全国的向上を目指して公開されている、倫理審査委員向けの倫理研修用動画教材です※7 。映像等多彩な内容が取り入れられている「動画」教材(1回20分程度)※8 であり、いろいろな教材のなかでもとても分かり易いものになっています。会員登録すれば無料で利用することができます。

※7:REC EDUCATION  倫理審査委員のための倫理研修用動画教材提供サイト  http://rec-education.org/
※8:「倫理審査委員会の必要性と倫理審査委員会の役割」「倫理審査のポイント」「介入・侵襲とは」「臨床試験の基礎知識」「臨床研究法の概要」「インフォームド・コンセントに関する審査ポイント」「個人情報保護法の改正について」など

おわりに

今回、事例として紹介したもの以外にも、さまざまな教育資料が公開されており、講習会やセミナーも開催されています。また、組織内での教育も、大学、病院、企業の倫理審査委員会などが企画して開催されています。
組織内の教育に加え、今回紹介した公開教育を必要に応じて活用することで、構成員のレベル向上を図っていくことが期待されます

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